公的機関が行っている食品検査ってどんなもの?その種類と内容について

私たちが毎日口にする食品は、安全に安心して食べることができるように色々な検査が行われています。平成27年に施行された食品表示法では、栄養成分の表示が義務化されました。食品検査は食品の栄養成分の分析だけでなく、食品の安全性の確認や、食品が衛生的に取り扱われているかどうかの確認などにも役立っています。

ここでは食品検査が行われている公的機関についてと、検査の種類と内容を説明していきます。

「食品検査の勘定科目は多岐にわたる」

食品検査の公的機関とは

食品検査を行う機関として、公的機関と民間の検査機関があります。公的の検査機関は「工業試験場」と呼ばれています。工業試験場は独立行政法人や都道府県などにより設置されており、工業技術センターや産業科学技術センターなどの名称で日本各地にあります。

食品の工業試験場は、石川県・愛知県・広島県・長野県・宮崎県などにあり、請け負っている検査の範囲はさまざまです。

食品の工場試験場ではどのような内容の検査が行われているのか、順に解説していきます。

食品栄養成分検査

食品のパッケージ裏に記載された「栄養成分表示」を見たことがある人は多いのではないでしょうか。その食品を構成する成分の分析結果が、食品栄養成分検査によって出されています。エネルギーや炭水化物・タンパク質・脂質の量や、ビタミン・ミネラル類まで細かく表示されていますので、消費者は商品を選ぶ際の目安にすることができます。

食品保存検査

これは「食品賞味期限」や「食品消費期限」を科学的な根拠をもって、適正に設定するための検査です。

食品には必ず記載されている項目ですね。検査の内容は、一定期間一定温度の場所で食品を保存し、菌の繁殖具合などから見て、どれくらいの期間の間に消費すれば食品として身体に影響がないかを調べます。品質の劣化が早い食品には「消費期限」、品質の劣化が比較的緩やかな食品には「賞味期限」が記載されます。

「消費期限」とは「未開封の保管状態で、安心して食べられる期限」です。「賞味期限」とは「未開封の保管状態で、美味しく食べられる期限」です。

アレルギー物質検査

現在アレルギー食品原材料として表示義務が定められているのは乳・卵・大豆・そば・小麦・落花生・えびなどがあります。同じ工場内の別商品の製造過程で使われている時などでも、それらが製造時に混入する可能性があるため、必ず明記しなければなりません。

近年アレルギー持ちの人は増えてきていますし、知らない間にアレルゲンを摂取し危険な目に合ってしまうという事態を減らすためにも、大切な検査といえます。

残留農薬検査

以前、中国から輸入された冷凍食品から農薬成分が検出され、輸入が禁止されたニュースが話題になりました。農薬の使用基準値は国によって違うため、輸入される食品にそれらの残留がないかどうかの検査が大切になってきます。

残留農薬検査は、食品に含まれる残留農薬量を測定する検査です。2003年に改訂された食品衛生法のポジティブリスト制度によって、国内外で使用されている農薬についての基準が設定されたため、今は基準を超える食品の販売は禁止され安全が確保されています。

カビ毒検査

カビが作り出す代謝産物のうちで、人などに対して有害な作用を示す化学物質のことを総称してカビ毒と呼びます。カビ毒は発ガン性があるものもあり、とても危険性が高いといわれています。現在300種類以上がカビ毒として報告されています。

カビ毒が発生しやすい食品は、穀物類や豆類などです。カビ毒検査は食品にカビ毒が含まれていないかを判定する検査です。輸入されてくる食品でカビ毒を含む可能性があるものに関して、特に重要な検査といえるでしょう。

微生物検査

調理器具や食品に付着している目に見えない細菌や食中毒菌を、目に見える大きさにまで培養し基準と照らし合わせて安全性を確かめる食品検査です。

O-157やノロウィルスなどが原因の食中毒を防ぐためにも、飲食店などでは的確な食品管理と定期的な検査が重要です。

放射能検査

近年重要度が高くなった食品検査項目です。新基準値も制定され、暫定基準値よりさらに厳しい基準となりました。食品の種類・採取場所や時期などを特定したうえで、放射線検出器により食品内に残留したヨウ素やセシウムなどの量を測定します。

測定結果は国や県のデータベースで確認することができます。消費者の不安を一掃するためにも、今後も必要な検査といえます。

異臭検査

食品のクレームからの検査依頼で多いのが異臭検査です。臭気を分析する機器を使用し、異臭の原因物質を特定し問題の改善に役立てます。匂いを感じさせる化学物質は約40万種と多岐にわたり、機械的な成分分析だけでは原因物質の特定が難しい場合があるため、臭気判定士による官能検査も合わせて行う場合もあります。

異物混入検査

異物混入検査もクレームからの検査依頼が多いです。「買った食品に何かが入っていた」とクレームがあった場合、その混入物が実際には何であるのか、さまざまな機器を使って検査するのが異物混入検査です。原因を調査することにより、異物混入の再発防止やクレームを受けた企業の信頼回復に役立てることができます。

機能性評価検査

近年、食品は栄養的な側面だけでなく健康機能の向上に役立つという側面も求められてきています。特定保健用食品の「トクホ」マークのついた飲み物や食品をよく見かけるようになってきました。特定保健用食品とは、科学的根拠を備えている国の審査のもとに消費者庁の許可を受けた食品のことを言います。

機能性評価検査でその科学的根拠についての調査を行っています。

遺伝子組換え(GMO)検査

遺伝子組換え作物とは、技術を使って遺伝的性質の改変が行われた作物のことをいいます。遺伝子組換え検査では、食品中の遺伝子組換え作物の混入の有無と、混入があった場合にはどの程度の割合で混入しているのかを検査します。

遺伝子組換え食品についてははっきりとしたデータがなかなか出てこないのが現状ですが、「できれば摂取は控えたい」と思っている人は多いのではないでしょうか。遺伝子組換え作物を使わない食品を製造・販売している企業であれば、検査をして商品パッケージに「GMO不使用」と明記することにより、売り上げが伸びる可能性があります。

食品添加物検査

食品添加物とは、食品の見栄えや風味をよくしたり、保存性をあげたり、栄養分を追加したりするために使われている調味料・着色料・保存料などの総称です。食品添加物検査では、食品内にある添加物の種類と量の分析を行います。

食品表示法によりある一定数の添加物は表記が義務付けられているので、食品の商品化において必要な検査と言えるでしょう。