大腸菌の検査のための食品検査

食品検査をすることによって、食べ物に付着した細菌の有無を科学的に調べることができます。

目では確認できないような微生物の存在も食品検査によって確認できますが、食べ物についている可能性のある微生物のなかでも、特に多くの食べ物につきやすいのが大腸菌です。

大腸菌を検査するためにはさまざまな方法があり、正しい方法で検査することにより、正確に食品の安全性をしっかりと確認することができます。

「食品検査の勘定科目は多岐にわたる」

衛生的な食品製造に役立つ大腸菌の検査

食品を生産する工場などで多くの注意が払われているのが、衛生的な環境の中で食品を製造することです。有害な細菌の繁殖を防ぐために、さまざまな方法がとられていますが、菌の繁殖を未然にふせぐだけでなく、完成した食品を検査することで、より確実に安全な食品を製造することができます。

こうした場合に役立つのが食品検査で、食品の中に微生物などが混入している場合、科学的な方法でその存在を明らかにすることができます。食品はその性質上、さまざまな微生物が繁殖しやすいですが、その中でも特に繁殖しやすいのが大腸菌です。

大腸菌が繁殖しやすいのは、自然界のさまざまな場所に大腸菌が存在しているからです。人間が生活している環境の中にも、大腸菌が繁殖しやすい場所は多く存在することから、衛生的に食品の製造をするためには、こうした大腸菌繁殖のリスクをできるだけ低減する必要があります。

一度だけでなく一定の期間をあけて、こまめに検査をすることで、大腸菌発生のリスクを継続的に防ぐことが可能です。

大腸菌の検査方法

大腸菌の検査の方法として一般的なのが、透明な寒天を使用して食べ物の中に含まれている大腸菌の存在を明らかにする方法です。食べ物の中に含まれている状態で、はっきりとは確認しにくい大腸菌も、寒天を使用することで、その存在をはっきりと見分けることが可能になります。

寒天を使用して食品の検査をする場合には、まず検査したい食品の一部を寒天と混ぜ合わせることから始めます。このとき、寒天と混ぜ合わせる食品はごく少量のものでよく、少量の食品と寒天をよく混ぜ合わせることで、食品の中に大腸菌が含まれている場合、菌が寒天にも感染しやすいようにできます。

このとき、食品と寒天がしっかりと混ざることができるように、どちらも液体の状態にしておく必要があります。硬さのある食品も水分のある液体などを混ぜることによって液状にすることで、寒天と混ざりやすくなります。

なお食品と寒天を混ぜ合わせる際には、両者の温度にも気を配る必要があります。温度が低すぎると、微生物が活発に活動しなくなるので、微生物が活動しやすいような温度に液状の寒天を温めておく必要があります。人肌よりも少し温かい程度の温度にすることで、食品と混ぜたときに微生物が活動しやすくなります。

大腸菌を検査しやすくするための工夫

液状にした食品と混ぜ合わせた寒天は、そのまましばらく放置しておきます。放置しておくことで、食品内に大腸菌が含まれている場合、寒天にも大腸菌が繁殖していくので、後で観察するときに、菌の存在がわかりやすくなります。

この時、注意しなければいけないのが、大腸菌が食品と混ぜられた液体の中のばらばらの場所に分散してしまうことです。

少量の大腸菌がそれぞれ別の場所で繁殖してしまうと、検査するときに確認しづらくなってしまうので、できるだけ同じところに大腸菌が集まってくるように工夫する必要があります。液体内で繁殖している大腸菌を見やすいようにするには、少量の液体を薄くのばした状態で保管するのが最適の方法です。

底の浅い透明な容器に、少量の液体を入れることで、薄くのばした状態で観察できるようになります。

容器に入れた検査用の液体は、さらに時間をかけて内部で繁殖させる必要があります。食品の内部に大腸菌が含まれている場合、時間の経過ごとに菌が繁殖していき、より存在がわかりやすくなります。菌を繁殖しやすい環境にするために、検査用の液体を入れた容器は温めた状態にしておく必要があります。

人肌程度の温度が一番大腸菌が活動しやすい温度なので、温度の保持をすることができる専用の機器などを使用して、しばらく検査液を放置しておきます。

より確実な大腸菌の検査

一定の温度に保管しておいた液体は1日程度置いたあとで、菌が繁殖しているかどうかを確認します。食品の中に大腸菌が含まれている場合には、検査液を入れた容器の中に大腸菌が繁殖しているので、肉眼で見ても確認することができます。

菌は液体の中に細かい点のような状態で繁殖しているために、少量の菌が分散して繁殖していると目で見てもわかりにくくなります。ですが、大量の大腸菌が一つの場所にまとまって繁殖していれば、誰が見てもはっきりと大腸菌の存在を確認することができます。

食品に大腸菌の存在が確認された場合には、さらに詳細な検査をして、より確実に大腸菌の存在を証明する必要があります。大腸菌の繁殖している寒天を別の寒天に移すことで、新しい寒天にも大腸菌が繁殖すれば、食品の中に大腸菌が含まれていることを、さらに確実に立証することができます。

ガスの発生でわかる大腸菌の繁殖

食品の中に繁殖した大腸菌の存在を検査する方法としては、ガスの発生を利用する方法もあります。大腸菌には複数の種類があり、種類によってその性質も微妙に異なっています。その中には特定の成分が含まれている食品のなかで繁殖した場合に、その成分を分解することでガスを発生させるものがあります。

そのために、検査用にとられたサンプルからガスが発生しているかどうかを調べることで、大腸菌の存在を検査することも可能です。この種のガスを発生させる大腸菌は、ガスを発生させるために、分解するための糖類などが必要になるので、菌を培養するための下地も糖類を成分に含んでいるものを、あらかじめ用意する必要があります。

食品のサンプルとそれらの下地を混ぜ合わせて放置しておくことで、食品に大腸菌が繁殖している場合、下地にも大腸菌が繁殖して、下地に含まれている糖類を分解して、ガスを発生させます。このガスの発生を確認することによって、大腸菌の存在を科学的に立証することができます。

大腸菌を下地に繁殖させて糖類を分解させるには大腸菌の働きを活発にさせる必要があります。そのために下地と混ぜ合わせた食品のサンプルは、しばらくそのまま放置しておく必要があります。温度の高い環境に保管しておけば、大腸菌も活動しやすくなり、ガスを分解しやすくなりますが、高すぎると逆に活動が低下してしまうので、50度以下の適切な温度に保管しておきます。

参考情報|食品検査機関